「コカ」と聞くと、どこか危険な印象を持つ人も多いかもしれません。実際、“コカイン”という言葉に直結するため、ネガティブなイメージが先行しがちです。
しかし、コカの葉はもともとアンデスの先住民たちが何千年にもわたって使ってきた薬草であり、現地では今もなお「聖なる葉」として日常生活に根付いています。実は、世界的炭酸飲料「コカ・コーラ」の名前の一部も、この“コカの葉”に由来しています。
今回の記事では、コーラの原料としても使用されていた「コカの葉」についてご紹介します。
コカの葉とは?

コカの葉は、南米アンデス地方原産の低木「エリスロキシルム・コカ(Erythroxylum coca)」の葉です。
乾燥させた葉は、現地で嗜好品として噛まれたり、お茶にしたりして使われており、高山病予防や疲労回復、空腹感の抑制などの効果があるとされています。
葉には微量のアルカロイド(コカインの前駆体)が含まれており、これが西洋で医療・化学的に注目されるきっかけになりました。
コカの葉と「コカ・コーラ」の関係

1886年、アメリカの薬剤師ジョン・S・ペンバートンが開発したオリジナルのコカ・コーラには、コカの葉の抽出成分が実際に含まれていました。当時のアメリカでは、コカ葉が「神経を落ち着かせ、活力を与える成分」として人気を集めていたのです。
同時に使用されていたのが「コーラナッツ」であり、これら2つを組み合わせたことで「コカ・コーラ」という商品名が誕生しました。

使用禁止と現在の取り扱い
しかし20世紀に入ると、コカインの乱用問題が世界的に広がり、各国で規制が強化されます。
その流れを受け、1900年代初頭にはコカ・コーラからも麻薬成分(コカイン)は完全に除去され、現在は「脱コカイン処理済みのコカ葉エキス」がごく微量使用されているのみです。
アメリカでは今でも、特別な政府認可を受けた製薬企業のみが合法的にコカ葉を取り扱っています。

コカの葉がったからこそ、現代の「コーラ」がある。
現代のコーラにはもはやコカの成分は入っていませんが、その名前のルーツには“植物の力を活かそうとした薬剤師の発想”がありました。
コカの葉は、ただの「危険な原料」ではなく、もともとは人々の暮らしとともにあった自然の薬草。コーラという飲み物の背景には、こうした植物の文化と薬学の歴史が隠されているのです。


コメント
コメント一覧 (4件)
[…] 当時のコーラは、まだ炭酸も入っておらず、「神経を落ち着かせるトニック(強壮剤)」として薬局で販売されていました。主な原料は、アフリカ原産のコーラナッツ(苦味とカフェインを含む)と、南米原産のコカの葉(コカインの原料)。今のコーラとはまったく違う、“ちょっと怪しい健康ドリンク”だったのです。 […]
[…] ペンバートンが最初に開発したのは「フレンチ・ワイン・コカ」という飲み物でした。これは赤ワインに、コカの葉(現在のコカインの原料)やコーラナッツ(カフェインを含む)などをブレンドした、当時流行していた「強壮飲料(ヴァン・マリアー二=Vin Mariani)」の一種です。 […]
[…] オリジナルのコーラ(1886年にジョン・S・ペンバートンが考案)には、コカの葉(現在は使用不可)とコーラナッツ(カフェイン含有)が使われていました。 […]
[…] 「コカ」は南米原産の植物で、古くから先住民が疲労回復や高山病対策のために使っていた薬草。一方「コーラナッツ」は西アフリカの植物で、豊富なカフェインを含み、覚醒作用があります。 […]